中国には「薬食同源」という言葉があるように、薬物と食物とはその源が一体であるという思想があります。古典には「上工は未病を治す」とあります。日常の食事に気をつけて、食養生を第一としなさい、最大の病の予防になります。
病気になって服用する薬(現代薬・漢方薬)を小薬といい、病気にならないように心身の歪みを整え、健康を保つ日々の食事を大薬(未病薬)といいます。
現代は飽食の時代・お金を出せば、季節問わず、食べたいもの、ほしいいものが手に入ります。
しかし季節に応じた物を食べたいものです。人間の身体は季節の影響を受けています。従って季節に応じた物を食すると良いでしょう。
春には芽の物(竹の子・ウドの若芽)を、夏には葉の物(キャベツ・ほうれん草)、秋には実の物(柿・クリなど)冬には根の物(サツマイモ・大根など)を中心に食べると良いかと思います。
秋を例にとると、「ナシ」は、身近な薬食です。
熱をとり、のどの渇きを補い、気管支の症状に効果的です。秋は肺臓が良く働く時季です。従って気管支喘息・鼻炎などを患っている方は肺臓を養う薬・食をとると良いでしょう。半夏(はんげ)入りのナシ煮料理は効果的です。夏で過剰摂取した水分を取り除き、咳・痰を除き肺臓を丈夫にします。そういった意味から漢方医学は薬膳と考えてもよいかも知れません。
毎日の食事、その食物も薬草のように病気、疾患を予防できるし、治療効果もあります。例えば、「刺身料理」、大根は胃腸を丈夫にし殺菌作用がある、菊の花は解毒、山葵は殺菌作用があります。刺身の味をより引き出すという意味もあるかも知れませんが、立派な薬膳料理であり、胃腸を養う食事です。
東洋医学では、酒は血液の停滞を防ぎ血流を促します。また、風、寒(邪)を防ぎ五臓六腑を養います。さらに漢方薬の作用を増します。
薬酒は民間的に常用され二千年前から良く飲まれていたようです。漢方薬を酒に漬けると、薬効が増し、全身の働きも良くなります。
サフラン、生姜(しょうが)が入り冷え症、女性疾患に広く用います。
生命力の源、腎臓を丈夫にし夏の足、腰の疲れに効果的です。
夏の胃腸の疲れに効果的です。この時季食欲がない、身体が重いなどの症状に効果的です。
漢方薬「葛根湯(かっこんとう)」を調剤している様子です。
たいせい堂薬局では薬草をスプーンで調合していますが やり方はさまざまです。
分包機で薬草を調合したり、中国のあるところのように手で調合したりするところもあります。
ここでは7日分を計りスプーンで1日分ずつ分けます。
ほんとのさじ加減ですね。
お客さん(患者さん)からの漢方薬・薬草についての疑問・質問にお答えします。
また、これまでにメールなどでの質問にもお答えします。
但し、私の店頭での経験によるお答えですので、他の先生方のご意見と異なる場合もございます。
漢方薬には即効性のあるものもあります。例えば「麻杏甘石湯」という処方があります。咳止めに良く使います。風邪をひいて初期症状は取れたが咳だけが残るという人に良く使います。
ポイントは頓服的に1~2時間おきに服用すると言う事です。従って場合によっ ては一日に10回も服用する事があるわけです。
漢方薬には「証」といいう”人それぞれの体質、その病状が異なる”考えがあります。上記のような特殊な服用にあたっては、必ずご相談して下さい。
長く服用とは、2~3ケ月を目安にします。
一般的に身体を補う薬(①)は食前に、胃腸にこたえる薬(②)は食後に、急性症状の際用いる薬(③)は時間に関係なく服用してもらう。
下剤とか古血をとる薬(④)は空腹時に服用してもらいます。従って漢方薬にによって異なりますし、その症状に応じて異なるわけです。
参考までに①~④の漢方薬は下記の通りです。
ここでの漢方薬はエキス剤のことの服用方法です。基本的にお湯で服用していただくよう指導しています。外出・旅行など服用が困難の場合は、水でもかまいません。漢方薬、他の薬もそうですが、「タンニン」という収斂作用のある成分が入っているお茶・コーヒーなどの服用は薬の吸収を遅らせます。牛乳・ジュースもそうです。
しかしお酒で服用するような漢方薬もあります。「当帰芍薬散」という婦人病に良く使う漢方薬です。「ー散」という形で服用するためとセンキュウという成分の胃腸障害を取り除くために酒で服用します。胃腸障害を取り除くのに「酒」とは以外ですが、漢方薬の特徴の一つでもあります。
コーヒーに例えると「レギュラーコーヒーとインスタントコーヒー」の違いと思ったら良いかと思います。エキス剤のもとは煎じ薬です。それを濃く(濃縮)し乾燥したものです。ここの状態では大差は無いと思います。しかし服用しやすくしたりする目的で乳糖類を加えています。従って煎じ薬の同等にするとたいへんな量になります。
病院等で処方されるエキス剤は40%~70%の成分だと思います。40%~70%とは処方によって違う事、メーカーによっても異なるという事です。以上のことから、効き目は違うけれど、エキス剤は携帯に便利、服用しやすいという利点はあります。
漢方薬を服用していただくのはたいへんなことです。
小建中湯(しょうけんちゅうとう)のように麦芽の甘い飴がが入っていても困難です。
西洋薬もそうですが、言葉が伝わる子どもさんには「このおくすりで元気になるからね」と母親、薬局側からやさしく問いかけて「その場で服用してもらう」とのんでいただけます。
砂糖類、ゼリーなどで混ぜ合わせても良いかもしれません。
小児の場合は、「ペースト状」にしてなめてもらうと、けっこうのんでくれます。
漢方薬のエキス剤の普及とともに併用する先生方が増えてきました。
しかし、西洋医学からの視点では併用は容認されているようです。東洋医学の視点からみれば、薬の効果が現れなかったり、逆に増強されたりと、漢方薬が本来持つべき「人それぞれの体質(証)にあった薬」とは言い切れません。従って、併用は基本的に禁ずべきでしょう。
例外として、急性期に併用する場合もあります。その際は医師、薬剤師にご相談下さい。
漢方薬とは二種類以上の薬草(生薬)から成り立っているものをいいます。
一つ一つの成分(生薬)にもいろいろあります。千種類以上あるといわれていますが、現在日本で保険適用(薬価)されている生薬は200種類ぐらいです。従って、200種類内の生薬で治療できれば良いのですが、それ以外の生薬(動物生薬含む)を使用する際は残念ながら保険適用になりません。
漢方は証(しょう)というもに基ずき治療します。証は固定したものでなく刻刻と動いているものです。
証とはその人の今の状態であり、訴えている事実なのです。
従ってそこに病名は関係ないのです。病気は常に変動しているとおもって下さい。
漢方薬は人それぞれの体質に合わせて調合しています。顔形が違うように体質も異なります。
従って自分に効いたからといって、他人に差し上げたりしてはいけません。
漢方薬は、漢方医学的に診断し治療を目的とするもの。
民間薬は、日本古来から民間伝承され、気軽に家庭などで使用されてきたもの。
漢方薬は数種の薬草(生薬)を組み合わせて服用するのに対し、民間薬はおもに単品を用いるケースが多い。
葛根湯(かっこんとう)・六君子湯(りっくんしとう)等の漢方薬は煎じ薬で服用すると良く効く。
香蘇散(こうそさん)・加味逍遥散(かみしょうようさん)等は揮発成分を多く含んでいるため散剤にした方が良く効くとされています。八味地黄丸(はちみじおうがん)・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)は蜂蜜で生薬をねりあわせたものです。そうすることによって胃腸の負担を軽くする。
要は胃腸に負担のかかりやすいものは、丸剤というわけだ。即効性は「湯」・「散」・「丸」で効くようである。
東洋医学にもいろいろ治療流派があります。
中国の漢方は「中医学」とよばれ、多くの薬草を大量に処方します。かたや日本漢方は少めの薬草で少量用いる。原点は一緒だが、漢方医学の聖典ともいうべき「傷寒論(しょうかんろん)」の解釈が少しずつ変わり日本独自の考えになってきました。
しかし、現在は中医学派で治療する研究会や先生も増えてきました。
梅雨で湿度が高くなると、人によっては体からの水分の代謝、排泄がスムーズにいかず、体内に余分な水分がたまってしまいます。
水分がたまる場所はさまざま。たとえば胃腸にたまる人は頭痛、下痢、むくみ、喘息などの症状が現れ、肌肉(体表近く)や間接の部分にたまる人は手足が重だるい、関節が痛いなどの症状が現れます。
まずは体の湿気を追い出すこと。漢方薬では人参湯(にんじんとう)、五苓散(ごれいさん)などを用い、胃腸の機能を高めたり、新陳代謝を活発にして発汗を促したりします。このように漢方は自然と体のバランスをうまく整える効果がありますが、その人にきちんと合った漢方薬を始める事が大切です。梅雨から蒸し暑い夏にかけて、余分な水分をためないようにすれば、夏バテ予防にもなります。
適度に運動をし、汗を流す事も大切です。冷たい飲み物や食べ物のとり過ぎにもご注意を。